しだいに息を荒げながら、山田は夢中で腰を動かす。
 明日香もこの擬似性行為の要領をつかんだのか、軽く噛んでみたり、袋に手を差し伸べるなど、様々なことができるようになっていった。
 と、そのとき。明日香の口からペニスがすっぽ抜けた。
「あ」
 二人の声が重なる。
 だが、山田の腰は急には止まれなかった。
 明日香の顔に、今日一番固くなっていた山田自身が押しつけられる。鼻の頭にあたり、ずるりと滑り落ちて張りのある頬に沈む。それだけでは納まらず、数回上下運動を繰り返し、明日香の端正な顔に、グロテスクな陰嚢がぺちぺちという間抜けな音をたててぶつけられた。
 口内とは違う感触が刺激となったのか、まるで山田が己の匂いを染み付かせようとするようにペニスを明日香の顔にすりつける。
「んんー。や、山田? あん、えっ、ちょっ」
「あぁ、吉崎さん……吉崎さん……」
 話しかける明日香に気付かないのか、山田は鼻だろうが、おでこだろうがお構いなしにこすりつけてくる。
 おでこに亀頭をおしつけているうちに、しっとりと濡れた明日香の前髪が山田のものにからみついてくる。
 次から次に与えられる新しい刺激に山田は有頂天になり、理性など消し飛んでしまった。
 髪の毛が絡まることなどお構いなしに、むしろこれ幸いとペニスを動かし、髪で己自身をしごきたてる。
 山田は明日香の顔という顔を蹂躙し尽くしていく。
 そのうちに、ふとしたはずみでつるりと明日香の唇をくぐりぬけたペニスは、そのままの勢いで喉の奥まで突き進んだ。
「んぇっ!? んぐ、む……あぐぅ」
 突然の事故に明日香はなんの反応もできない。異物をなんとかしようと喉が強烈に収縮した。
「うわっ! なに? す、すごい!」
 今までにない凄まじいしめつけと、蠕動に山田は耐えられなかった。
 ペニスのかさが大きく広がり、本日三度目にもかかわらず、今までで一番勢い良く白濁液が鈴口から発射された。
 びちゃびたと、喉に貼りつくようにして粘液が撒き散らされる。
 喉の奥で爆発した熱い塊に、明日香の体も限界を迎えた。思うさま蹂躙されて、配線が焼き切れたのか、頭が真っ白になったかと思うと、頭の先から、爪先までを一斉に快感の大洪水が襲った。
「あ、あっ……ん、ひゅごい、な、なにか……くるっ! あ、あぁっ、わらひがろっかにいっちゃうぅ!」
 明日香は全身をがくがくと痙攣させたかと思うと、意識を手放した。
 山田は慌ててペニスをひき抜こうとするが、その最中にも、精液は出つづけ、喉、口内、唇を汚し、なんとか引き抜いたところで、大きく震えて、たっぷり明日香の顔に白い雨を降らせた。
 脳髄まで痺れさせて、ぽつりと山田が呟いた。
「はぁ……、凄く気持ちよかった……」
「けほっ、んっ、けほっ」
 可愛らしい咳をして、喉を苦しめているものをなんとかしようとする明日香。
「し、死ぬかと思った……」
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ」
「あんなのわざとだったら一気に破局よ」
 今まで興奮で赤くなっていた山田の顔が、一気に蒼褪めた。
「ほ……ほんとにごめん、もう気持ち良すぎてなにがなんだかわからなくなって」
「今回だけは、私もちゃんとアソコでイかしてあげられなかったから、ゆるしたげる」
「吉崎さん……ありがとう」
「最後のはなんかすごかったし。あれがイクってことなのかも……」
 明日香は山田に聞き取られないように小さく呟いた。
 それから二人はシャワーを浴びなおすことにした。いまだに、少しぐったりしている明日香を山田が丁寧に洗い、湯船に入れてから、自分もシャワーを浴びる。
 体を流し終わった山田を明日香が誘い、二人でゆっくりと湯船につかる。
「あのさぁ……」
「なに?」
「私、山田のことすっごい好き」
 臆面もなく、好意を伝えられると、慣れていない山田はすぐに頭に血が昇る。
「ぼっ、僕も」
「じゃあキスして」
「う……うん」
 顔を近づける山田を、明日香がさえぎった。
 自分から誘ってきながら、その行動に山田が戸惑う。
「その前に、ちゃんと私のこと好きって言って」
「よ、吉崎さん……」
「じゃなくって! ちゃんと名前で呼んで。恋人どうしなんだから」
「あ、あす……」
 明日香の鼓動が早くなる。
「あす……かさん」
「さんはいらないってば」
「あっ明日香」
「なに?」
 明日香が首をかしげた。
「す、好きです」
 何度もつっかえながら、山田はそれだけを口にすると、不器用に明日香の唇に、自分の唇を押し付けた。
 歯がぶつかり、かちりと音を立てた。その音は、なにかがしっかりはまり合う音のように、二人には聞こえた。

「ちょっとー? しんー? どこにいるのー? お風呂ー? 熱あるのにお風呂なんか入って大丈夫なの?」
 騒々しく誰かを探す声が聞こえ、勢い良く風呂場のドアが開かれた。
「あんた……今日は調子が悪いんじゃ……。よ、吉崎ぃ?」
 すっとんきょうな声で明日香の苗字を呼ぶ女性。
 二人は唇を重ねたまま、目だけを動かす。
 そこにはスーツ姿の女性が目を丸くして立っていた。
「ね、ねっ、ねね姉さん!?」
「せ、せっ、せせ先生!?」
 恋人達の発した単語はまるで違うものの、同じ人物に向けられたものであった。
 山田の世界がぐにゃりと歪む。
「こ、これは、その」
「しん! 話は後でゆっくり聞くから、とりあえず……お風呂すませなさい」
 うろたえる弟に向かって溜息をつくと、姉はドアを閉めて出ていった。
「ど、どうして、山田先生がいるのよぉ?」
「姉さんなんだ」
「えー! マジで?」
「うん。色々と問題があるから学校では内緒にしとこうってことになって」
「ふぅん……でも大変なところみられちゃったよね」
「ど、どうしよう」
 うろたえる男とは対照的に、女のほうは対して堪えた様子もない。
「別にいいんじゃないの? 悪いことしてたわけじゃないんだし」
「そ……そうかもしれないけど」
「とりあえずさぁ、先生に私のこと紹介してね。僕の彼女です、って」
 明日香がにっこりと、微笑んだ。
 質問攻めから逃げるために学校を休んだのに、家族にとんでもない場面を目撃されてしまい、山田は頭を抱えた。乗り越えたと思った羞恥心が再びわきあがってくる。やはり、友人と、家族ではなにか違うものなのだろうか。
 人生の困難さというものを、高校生という若さで痛感した山田だった。
 しかし、風呂からあがる頃には、再度の試練も乗り越えていることだろう。妙なきっかけで付き合うことになった、破天荒な彼女がついているのだから。
「こんどアナルセックスってしてみようか?」
 山田はぶくぶくと湯船に沈んでいった。


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