きっかり十秒、山田はただ突っ立っていたが、突然ものすごい勢いで服を脱ぎ出した。
 どこか吹っ切れたような様子で、ガラス製の理性の壁はもはや役に立たなかったらしい。
 大きく深呼吸すると、勢い良く湯船へのドアを開けた。
 湯気の中に、大きく目を開いている明日香が立っていた。驚いているせいか、体を隠すこともしていない。
 山田がこんなにも素早く入ってくるとは思っていなかったのだろう。
 山田は山田で、まさかいきなりの天国かとも思える光景を予想していたわけではないが、それでもチャンスを逃さず恋人の裸身を頭から爪先まで、あますところなく鑑賞した。
 無言で自分を見詰める山田の股間が、むくむくと大きくなり、起き上がっていくのを明日香は、呆然としたまま見つめている。そして、山田のものが完全に勃起しきったとき、明日香は可愛らしい悲鳴をあげて、その場にしゃがみこんだ。
 いまだに一言も発しない恋人に向かって明日香が問いかける。
「どっか変だった? おかしい?」
「なんか……上と下の毛の色が違うのって不思議な感じがするなと思って」
 確かに、頭髪はほとんど金色なのに対し、陰毛は濡れているせいもあるのか、黒々としている。
 直視するのはためらわれるのか、ちらちらと視線を下にやりながら山田は答えた。
 羞恥からだろう、ぶんぶん手を振りながら、明日香が支離滅裂なことを言いだす。
「ち、違うんだって! いつもはもっとちゃんと手入れしてるから、もっと綺麗だし、て言うか、ちょっと最近してなかっただけだから。でも別にサボってたとかじゃなくって、ちょっと忙しかったから。あ! もっと薄いほうが良かった? 他の娘と比べても濃いほうじゃないんだって。な、なんだったら、そ……剃ってもいいしっ!」
 いまひとつ噛み合わない会話になってしまったが、山田にそれを気にする余裕はなかった。
 見事なボディラインの恋人が一糸纏わぬ姿でいるのだから当然といえば当然だろう。
 腕だけでは隠しきれない胸が山田の視線を吸い寄せる。
「別に気に食わないとかじゃないよ。ちょっと不思議な感じがしただけだから。でも、すごく綺麗だと思う」
「……あ、ありがと。山田もシャワー浴びなよ。私お風呂に入ってるから」
 最初に湯を張っていたのだろう。見ると浴槽からは湯気が立ち上っている。
 そそくさと明日香は湯につかった。
「うん」
 律儀な返事を返し、山田はシャワーを浴びはじめた。
 奇妙な沈黙が風呂場を支配する。
「あ、山田もお風呂入ったら」
 シャワーを浴び終えた山田に明日香が声をかけた。
「いいの?」
「ここって山田のうちじゃん」
「じゃあ……」
 特別に広いこともない浴槽に二人で入ると、当然体が触れ合う。
 柔らかい明日香の体の感触に、それだけで山田は快感を感じた。
 明日香もまた、山田の体温を心地良く感じていた。
「よ、吉崎さん」
 名前を呼ばれ、明日香の体が動いた。湯船に静かな波が起こる。
「なに」
「いや、その……本当にいいの?」
 山田の質問は当然今からしようとしていることについてだろう。
「いいよ」
 あっさりと明日香が答えた。
「だって、もうここまで来ちゃったし。それにもう山田のそんなになってるし」
 明日香の視線が山田の下半身に向かう。
「ご、ごめん」
「あのさぁ」
「うん」
「胸、触ってもいいよ」
 大きな水音と共に山田が立ち上がった。勢いで山田のものが揺れる。
 目の前で存在を主張するものに、なにを思ったか明日香が舌を伸ばした。
 ぴちゃり。
 静かな浴室に、今までのものとはまったく違う淫らな水音が響いた。
「うわっ!」
「痛っ!」
 驚いた山田が腰を動かしたせいで、明日香の鼻先が叩かれてしまった。当然、山田のものによって。
「ご、ごめん」
 鼻先を抑える明日香を見て、元気な股間とは裏腹に山田が情けない声を出す。
「いいよ、私もいきなりごめんね。あのね、山田」
「どうかした?」
「ここでしよ」
「よよよ吉崎さん?」
「なんかさ。山田の体があったかいなって思ったらもう、ここでがよくなっちゃったの」
 思わず山田は風呂場を見まわした。洗い場にはマットが敷いてあるから、タイルが痛いことはないだろう。広さも、まあやってやれないことはない程度のスペースはある。だけど……。
 まだ心の決まらない山田に明日香が声をかけた。
「山田。胸触って」
 明日香の手を添えられて、山田は丸いふくらみに手を伸ばした。
 山田は、吸いつくような明日香の胸に手を押し当てただけで、指を動かそうとしない。それでも明日香は自分の胸に触れられていると思うと、じんわりと暖かいものを感じた。
 ようやく、山田の胸が、柔らかなふくらみの形を変えようとうごめきだした。
 明日香は目を閉じ、じっとしている。が、呼吸が次第に早くなっていく。
 山田の指が、ぷっくりと盛り上がったふくらみの頂点に触れた。
「あ……」
「痛くない?」
 声をあげた明日香に山田が心配そうな声をかける。
「大丈夫、気持ち良かっただけだから」
 帰ってきた言葉に、山田は胸を高鳴らせた。
 きっと乳首が気持ちいいんだ。そんな感想を抱き、そこを重点的に攻める。
 初めて触れる恋人の胸を、新しいおもちゃを与えられた子供のように夢中で弄りまわす。
「んっ……あ……」
 明日香の唇がわずかに開かれ、そこからなまめかしい吐息が洩れた。
 勢いづいて、山田は尖りだした先端を力を入れてつまんでみた。
「ひぁ!」
 鋭い悲鳴があがり、それがさらに山田を興奮させる。
 今までにない快感に、明日香はうろたえていた。
 まさか胸だけでここまで翻弄されてしまうとは思わなかった。
「……や、山田……。お風呂から出よ」
 確かにいつまでもこのまま湯船に入ったままで居るわけには行かない。
 山田は名残惜しげに指を胸から離すと、かわりに明日香の手を取って二人で湯船からあがった。


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