「はぁはぁ……あぁ、どうして。 んっ、はぁ、なにか、いたらないところがありましたか?」
 息を乱しながら、咲が問うた。
 唇は物欲しそうに半開きになって濡れている。
「いっ、いや。そろそろお前も男のものがどんなものかわかっただろうから、これを試してもらわないと」
 勘九郎は傍らにおいてあった箱を手に取った。
 当然、中には三種類の張型がはいっている。
 勘九郎がその中から一番小さいものを取り出した。自分のものよりもひとまわりほど小さいだろうか。
 それを見て、咲は本来の目的を思い出した。
 愛しい主人に奉仕するのが幸せすぎてすっかり忘れていたのだ。
「ほら。私が口に入れてやるからなにか妙な感じがしたら言うのだよ」
 張型を突き出されて、咲は唇を開いた。
「……んっ」
 全部を口中におさめても、大きさのせいか先ほどよりも苦しくはない。
 つるりとした表面が舌に心地良いぐらいである。
 勘九郎が巧みに張型を動かし咲の口腔を攻める。
 さすがに淫具屋の本領発揮というところだろう。本来は違う目的のはずの器官なのに咲はしだいに、快感を覚え始めていた。
「ふぅ……ふぅ、んぁっ」
「どうだい? なにかおかしなところはあるかい?」
「ひいえ。ひっともおかひくひゃいれす」
「ああ、すまない。こんなものを咥えていたのではな」
「ひちゅれいしました。なにもおかしくはないと思います……ただ」
 言いよどむと、あえかな咲の頬がぽっと染まった。
「ただ?」
「その……先ほどの勘九郎様のものと違い、その、熱くないのが、あの、気に……」
 自分でもはしたないことを口にしているとわかっているのだろう。どんどん声が小さくなっていく。
 そんな咲の様子に気づいたふうもなく、勘九郎はあごに手をさする。
「ああ、冷たいのだな。うん。以前からそこはなんとかならないものかと思っていたのだが、いかんせん方法がなくてなあ。使う前に湯で温めるぐらいしかできないんだ。それだけなんだな、よし。それじゃあ次だ」
 そう言うと勘九郎は手にしていた張型を丁寧に拭い、次のものを取り出した。
 今度は勘九郎のものと同じぐらいの大きさである。
「よし、口を開けて」
「はい」
 やっぱり最初冷たいのが気になるな。勘九郎様のがあんなに熱かったせいかな。
 まともな状態なら、考えただけで自分を責めるようなことを思いつつ、咲は偽の男根を咥えていく。
「ん!」
 妙な感触に思わず声が出てしまった。
 幹の部分に小さな起伏を感じたからである。
 二本目は大きさこそ普通であるが、その胴には丸い突起が無数についていたのだ。
「ああ、驚いたかい。これは女の人がより気持ちよくなるようについているんだ。この小さな突起が内側から擦れて、それは気持ちいいそうだ」
 のんきな解説をしている勘九郎だが、咲はそれを聞き流せるほど鈍くはない。
 主に自覚がなくても、娘には十分に言葉責めになる。
 ああ、自分は今旦那様に責められているのだと思うと、じわじわと下腹部が熱くなってきた。
 独りでにふとももを擦り合わせるようにして、腰をくねらせてしまう。
 粒上の突起が口の粘膜を擦るように刺激して脳髄を蕩けさせる。
 はしたないとわかってはいるが、それを舌が、内頬が、唇が、勝手に求めてうごめく。
「どうだい? 口に当たって痛いなどということはあるかい」
「ひいえ、らいじょうぶれす」
 無理にしゃべろうとして口の端から、つうっと雫が垂れた。
 そこで、咲は気づいた。
 偽物とはいえ、恋しい人の前で男根をくわえ込んでいる自分に。
 そのうえ、なにか違和感があればすぐにわかるようにと、じっくりその顔を観察されている。
 眉を寄せ、それを離したくないとばかりにふぅふぅと鼻息の荒い情けない顔を。
 咲の全身を羞恥と、それを上回る悦楽が包み込んだ。
 意識が半分とんでしまって、白痴と化した咲を感情を押し殺した目で、勘九郎が見下ろす。
「ふむ。仕掛けも上々のようだな。では……最後だな」
「ふぅぅぅん。んっ、んちゅっ、くちゅ……ずずっ、ふぁっ、くぅ……」
 手にした張型で咲の唇をこねくりながら、勘九郎は最後の一本を取り出した。
 最後のものはまさに巨根といってよい大きさだった。その上、いかつい血管が全体を覆っており、淫具ではなく凶器という面持ちだった。
「さぁ、最後の張型だ」
「ひっ!」
 迫ってくる凶器に、咲が悲鳴をあげ正気に返った。
「これも確かめてもらわなくてはいけない」
「は、はい」
 迫り来る巨根におそるおそる唇を開く咲。
 精一杯口を開いてなんとかそれを咥え込もうとするが、まるで桁が違う。
 結局、咲は半分も含むことができなかった。
「咲、おさまらないのなら舌で確かめるんだ」
 優しい主の声に、咲が再び陶然とした表情で舌を動かし始める。
「んぇっ……」
 大量のよだれで糸を引く亀頭を吐き出した咲は、そのまま先端にくちづけをすると、吸い付いたまま根元のほうへ頭を動かしてった。
 ごつごつとした血管の盛り上がりにあわせて、唇が歪められていく。
 ちゅうちゅうと音を立てながら、幹がねぶられる。
 ときおり、唇と張型の隙間に舌先が除くのがたまらなくいやらしい。
 やがて根元を掴んでいる勘九郎の指にまで唇が触れた。
 だが咲は引き返すそぶりも見せずに、主の指にくちづけの雨を降らせると舌を絡ませる。
 ぞくりと勘九郎の背筋を快感が走った。
 それを顔にはださずに、ぬめぬめとうごめいている舌を振り払うことなく咲のしたいようにさせる。
 うっとりと、蕩けるような微笑を咲が浮かべた。
 なにかを求めるように淫猥な視線を向けられて、どきりと勘九郎の心臓がはねた。
 勘九郎はぴくりと眉を動かし、指を舌に絡めてやる。と、咲の瞳が嬉しそうに細められ、血の気がなくなるほどに吸い込まれる。
「あぁ……勘九郎ひゃまの、指……」
 甘い吐息とともに漏らされた言葉に、勘九郎はようやく本来の目的を思い出す。
 咲の唾液まみれの指を優しく引き抜くと、物欲しそうに動く唇に張型を咥えさせてやる。
 まるで横笛を吹くように咲は偽のペニスに舌を這わせ、吸い付いた。
 二度、三度とぬるぬるになった張り方を動かしてやると、そのつど尾をひくようにピンクの舌先が流れる。
「もう十分だろう、問題はないようだ。助かったよ咲。よくやってくれた。お礼は後で必ずさせてもらう」
 なにかを耐えるように、一言一言を噛み締めながら勘九郎が言った。
 手早く張型を拭うと、脇にあった二本の横に並べる。
「さぁ、咲も疲れただろう。下がって休んでおくれ」


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