「おー。全部見えた」
 ははぁ。脚がMに見えるからM字開脚か。
 我ながら暢気なことを考えていると、愛しの彼女が噛み付いてきた。
「言うなボケっ! コロスぞ!」
 ぷるぷると震えているのは怒りだろうか、それとも羞恥だろうか。僕としては見られる快感に耐えているというのが一番望ましい答えなのだが。
「いやいや。自分でじっくり見たことないだろ」
「黙れ! 死ねっ!」
 だんだん言葉づかいがひどくなってきた。照れ隠しだと都合よく信じよう。信じるものは救われる。
 第一、言葉とは裏腹にあそこは濡れていやらしくぬらぬら光っている。
 割れ目の周りに生えている毛が、濡れているせいで余計に色濃く見える。
 軽く突ついてやると、心地よい弾力が指先に伝わってきた。
 ぺろりと指を舐め、彼女の味を楽しむ。
「こういうのをぐちょぐちょって言うんだろうなぁ」
「……んんんんっ!」
 僕の露骨な表現に、なんだかんだ言って根がうぶな薫は、もはやなにも言えなくなったらしい。うめき声を食いしばった歯の隙間から漏らすだけだ。
 僕は薫のあそこの温度がわかるぐらいに顔を近づけて、じっとそこを見つめた。
 生々しい雌の匂いが鼻先を掠める。
「あ、ほくろだ。知ってた? こんなところにほくろがあるの」
 恥丘の端に陰毛に隠れていた小さなほくろをつついてやる。
 薫はびくりと背筋をそらせた。この調子でいったら随分と背筋が鍛えられそうだ。
「あっ、そんなとこ、さっ……触るなっ……」
 自分の痴態を見まいと目をかたく閉じた薫が懇願してくる。
「触るなって言われてもな。わかってる? 薫は僕のものなんだから、自由にする権利は僕にあるんだ。だからこれも僕の」
 ほころんでいる割れ目の奥からとろとろとあふれ出すものを指で救って舐める。その際に、わざとクリトリスを掠めるようにしてやると、
「んひっ!」
 薫は敏感に反応して情けない悲鳴をあげた。
 ひざを握り締めていた指にぐっと力を入れて、足を閉じまいとこらえている。
「でもあれだよな。命令でも、嫌だったら普通自分で足こんなに広げないよな」
 僕がぽそりと呟いた言葉に薫が敏感に反応した。
「なっ! き、桐野が喜ぶから付き合ってやってるだけだ! あたしはほんとはこんなことしたくないっ!」
「ほんとに?」
「当たり前だボケっ!」
 噛み付かんばかりの剣幕だ。でも、これが薄皮一枚のフリ――自分さえ騙すためのフリ――だということを、本人が知らなくても、僕が知っている。
「ほんとにそうかな?」
 ぴちゃり。僕が触れるとそこは淫猥な水音をたてた。
「っぅ……! 当たり、前だっ」
 責められると途端に、薫の声は弱々しいものになる。
 自分でも情けない声をあげているのがわかるのだろう。悔しそうに僕を見上げている。
「でも……さっきよりも溢れてない? 愛液」
 なんとなくだが、そんな気がする。
 その証拠にシーツの染みがさっきよりもだいぶ大きくなっている。……と思う。
「てっ、てっ、適当なこと言うなっ!」
 今にも泣きそうな顔で、それでも語勢は強いのが最後の抵抗というところか。
「本当は気持ちいいんじゃないの? ほら、これ見てよ」
 僕はシーツを指で押した。すると、そこからじわりと染み出るものがあった。
「これ、どう考えても薫のだよな」
「ち……がぅ。あたしは、桐野が喜ぶから気持ちいフリしてるだけで……」
 じょじょに歯切れが悪くなってくる。
「ほんとにフリ? 僕のため? 昨日はそう言ったけど……本当は自分が気持ちいいからやってるだけなんじゃないか?」
 きっと今の僕はさぞかし邪悪な顔をしているだろう。自分の言葉に自分でもひどいやつだと思うぐらいなのだから。
「ちが……ちがう。あたしは……きり、のが」
 訳のわからない恐怖に襲われているのだろう。今までの自分が自分でなくなりそうな。
 薫の不安げな表情に心をときめかせながら、僕は優しく語り掛けた。
「やっぱり薫は苛められると嬉しい変態なんだ。だから昨日もお尻叩かれて気持ちよくなったんだよ。こんなふうに」
 僕は太ももを軽く叩いてやった。ぱちんと小気味よい音がする。
「ひっ!」
 悲鳴とは裏腹に薫のあそこから、小さくぴゅくっと愛液が噴き出した。
「こんなふうに足開いてるのも、はやく僕に入れてほしいからだろ?」
「ちが……」
「そろそろ素直に自分は変態ですって認めれば?」
「い、やだ……」
 わかってはいたが、やはり強情な性格だ。体は素直なことこの上ないのに。
 僕が次の一手をどうするかと思案していると、息の詰まったような、妙な声が聞こえてきた。
 部屋には二人しかいないのだから、僕でないということは当然薫の声ということだ。
 ふと目線を上げると、薫の顔が切なげに歪んでいる。
 はじめは快感に耐えているのだろうかと思ったが、それは勘違いだった。
 黙っていると、薫は突然しゃくりあげ、大粒の涙をぽろぽろこぼして泣き出したのだ。
 慌てたのは僕だ。
 なんで泣く?
 そんなにひどいことしたか?
 ……くっ。してないと言い切れない自分が憎い。
 自問していると、彼女は足を押さえていた手を離し、顔を覆った。
 それでも脚が開いたままになっているのは、僕の言うことを守っているのか、そんなことが気にならないほど切羽詰っているからなのか。
 とにかく理由を尋ねなければ。
「なんで泣くんだ」
 しかし、ぐずるばかりで答えるそぶりもない。
 僕は濡れた頬に手を添えると、もう一度問いかけた。できる限り優しい声で。
「なんで?」
 弱々しく僕を見つめると、薫は震える唇で答え始めた。嗚咽まじりではあったが。
「っ……ぇぐっ、だ、だって、えっ……っ、へ、変態だとっ、……んっ、桐野に、ひっ、く、ぐすっ、桐野に……嫌われるっ……」
 今なら世界あいた口が塞がらない協会主催世界あいた口が塞がらない選手権で日本ランキング、いや世界チャンピオンも夢じゃないぞ。
 彼女は今までの僕の仕打ちを受けてきてノーマルだとでも思っていたのだろうか。
 己のことを雌奴隷呼ばわりするような相手は変態だと認識すべきだと思うのだが、これはもしかして愛の力というやつだろうか。
 ……ともかく、自分がアブノーマルなのがだめだと思っている彼女の勘違いを正してやればいいだけだとわかった僕は、胸を撫で下ろした。
 僕はそういう変態が嫌いじゃないよ、と伝えれば事態は解決するのだから。
 まあパラダイスオーケストラとマグロの、といった類の変態でなければ問題ない。
 薫の濡れた頬をぬぐってやる。
「僕は薫が変態でもいいんだけど」
 薫がおどおどとこちらを窺うような反応を見せた。
「ほ、ほんとか……?」
「もちろん。さっきも言っただろ。好きだって」
「桐野ぉ……」
 今度は感動の涙で、彼女は瞳をうるうるさせている。
 すがるような声で名前を呼ばれ、背筋に得体の知れない快感が走った。
 心が高ぶる。

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