なだらかなふくらみをゆっくりと丁寧に揉みしだく。
 喜多を焦らすようにそうしていると、息がじょじょに荒くなってきた。
 ときおり切なそうに身をよじり、唇からは僕を誘うように小さな隙間ができて、そこから甘い声を漏らしている。
 思わず、柔らかくふるふるした唇にキスを落とすと、あっさりと我慢の限界に来て、思わず彼女の耳たぶに歯を立ててしまった。こんなにおいしそうなんだからしかたがない。
 彼女の匂いを心行くまで吸い込みながら、弾力ある耳たぶの感触を愉しんでいると、喜多の体が大きくびくりと痙攣した。
「ん? ぉわっ!」
「ぐあっ!」
 突如跳ね起きた彼女の頭に、見事に鼻をやられて僕はのけぞった。
 そんな僕の苦しみも知らずに、彼女は自分の体を不思議そうに見下ろしている。
「あれ? なんであたし裸なんだ。……さっきのリビングじゃないぞ。うわっ! 桐野!」
 彼女の背後で鼻を押さえている僕に気づいた喜多が、驚いて振り返る。
「てっ、てめぇ! あたしが寝てるあいだになにしやがった!」
 喜多が僕から跳び退り、手近にあったタオルケットで体を隠す。あわただしいことだ。
 僕はというと、じんじんと痛む鼻を押さえているばかり。まさか鼻血はでないだろうな。
「あたしの服はどうしたっ!」
「諸般の事情で脱がせていただきました」
「このボケっ!」
 わめきはするが、自分の格好が気になるのか、喜多は僕を睨むだけでなにもしてこない。
 この隙に、できる限り言い訳をさせてもらおう。
「いや、喜多さんの寝顔があまりにも可愛かったせいで……」
「お、お前はそう言うことを言えばあたしが黙ると思って」
「本心だって。あんなに気持ちよさそうに寝てたら誰だってその手伝いがしたくなるよ。抱きしめてキスしたくなったぐらいだし」
 喜多は左右の指を合わせ、もじもじしながら、顔を真っ赤にしてぶつぶつ言い出した。
「手伝いっつっても、なんで裸にすんだよ。寝てる間にこそこそしなくても、別にあたしは、その……桐野が脱がしてくれるなら、なっ、て、なに言わせんだよ、もう」
 声が小さすぎてよく聞こえなかったが、こういう場合の彼女はたいていこちらが赤面するようなことを言っている。
 聞き取れないことを喜ぶべきか、悲しむべきかは置いておいて、この数日の付き合いで僕はそれを学んだ。
 しかし、一人で遊ぶのが好きだな。
 このぶんだと、もう言い訳も必要ないだろう。
 話がそれたついでに、あれも聞いておこうか。
「喜多さん」
「……ん? お、おお。なんだよ」
「いや、前からずっと聞きたいことがあったんだ」
「改まってなんだよ」
「すごい疑問なんだけど」
「もったいぶんなよ」
「どうして僕を好きになったんだ?」  喜多はまさに開いた口がふさがらないという顔をしてみせた。
 ぱちぱちと瞬きを繰り返し、僕をじっと見つめる。
「そ……そんなこと言えるかボケっ!」
 包まっているタオルケットに顔をうずめて、じたばたもがく。
 すらりと伸びて収まりきらない足も暴れまわるって、喜多の感情を表現しているようだ。
 危うく僕がけられるところだった。
 照れ隠しにしては少々過激すぎる。
「僕としては、どうして喜多さんみたいな女の子が僕を気にするようになったのかすごく不思議なんだよ」
「まぁ、あたしは確かに桐野と違ってヤンキーだけどよ」
「いや、そういうことではなくて。喜多さんみたいな可愛くて、かっこいい美少女がどうしてって意味で」
 自分で言ってて歯がガタガタ浮きそうだが、いくぶんかは本音も混じってるってことで勘弁してもらおう。
 喜多は、僕の美辞麗句を真に受けたのかどうかわからないが、きらきら輝く瞳で僕を見つめている。感動しているのだろうか。
 喜多はうつむきながら、ちらちらとこちらの様子を窺っている。
 彼女と目が合った。僕は吹き出しそうになるのを必死でこらえ、できる限りの真剣な顔をつくる。
「桐野だってかっこいいぜ」
 その言葉は嬉しいが今聞きたいのはそんな寝言ではない。僕ってひどいヤツか?
「僕自身はそうは思えないんだ。だからなにかきっかけでもあれば教えて欲しい」
「いや、でもそれはさすがにな? マジで恥ずいしよぉ」
 だめか。仕方ない、方針転換だ。
「わかったよ、喜多さん。こっち来て」
 僕は両手を広げて彼女に呼びかけた。
「え? なんだよ急に。抱っこはいいって、恥ずいし」
 なんだかんだ言いつつ、まんざらでもなさそうに僕のほうにやってくる。
「あたしは嫌なんだからな。桐野が言うから仕方なく……あっ」
 白々しい言葉を重ねる喜多の手を引っ張り、無理やり抱きかかえる。
 僕の腕の中に収まった途端、彼女はおとなしくなった。今からなにをされるのか想像がつくのだろう。
「ねえ、喜多さん」
 僕は彼女を覆っているタオルケットの上から、胸に手を伸ばした。
「ん……」
 敏感な彼女はそれだけで、小さく声を漏らす。
 僕はそれに答えるべく指に力を込めた。
 しかし、布一枚挟んだままではもどかしいのか、喜多は胸を僕の指に押し付けるようなそぶりを見せる。
「あれ? なんか喜多さん自分から胸を突き出してないか?」
 びくりと喜多の体がこわばった。
「そ、そんなことしてねえよ。ふざけたことぬかすとぶっコロスぞ」
「僕の気のせいだったらいいんだ」
 僕はタオルケット越しにもわかるぐらい尖っている乳首を指で軽く弾いた。
「ぃっ……!」
 唇をかみ締め、ぎゅっと体を縮めて快感に耐えている喜多はすごくいじめがいがある。
 今までずっと我慢してきたぶん、思う存分乳首を弄らせてもらおう。ただし、直接は触らない。
 これはあくまで交渉のための手段だからだ。この方法のすばらしいところは同時に喜多いじめもできるということだ。
 小さな胸全体をこねくり回すようにしながら、たまにその先端を摘み上げてやる。すると、そのたびごとに喜多の背筋がびくりとのけぞった。
 数回それを繰り返すと、彼女はたまらなくなったのか、荒い息をつき始めた。
「きっ、桐野……そ、そろそろ」
「なにがそろそろなんだ」
「んっ……んにぃっ。はぁ、ちょく……せつっ……ぅ!」
 たずねながら、両方の乳首を軽くねじり上げると、喜多は悲鳴混じりに懇願してきた。
「よく聞こえないんだけど」
「これ取ってぇ……。直接、おっぱい触ってくれよぉ」
 体をねじり、僕を見上げる喜多の切れ長の瞳は快楽に酔って潤んでいる。
 僕もそれに応えて彼女をめちゃくちゃにしてやりたいが、そうはいかない。
 今こそネゴシエイト成功率97.5パーセントの力を見せてやる。
 喜多のあごに指をかけると、優しく語り掛ける。
「喜多さん。物事を頼むときには対価がいるんだ。直接触って欲しかったら、僕のお願いも聞いてくれないと不公平だろ」
 喜多は僕の言葉にがくがくとうなずいた。
「わかったから、はやくっ、聞くから、はやくっ」
 ほんとにわかってるのか? まあいい。
「よし。じゃあ僕のお願いは、喜多さんがどうして僕を好きになったきっかけを教えて欲しいんだ」


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