「桐野の、顔が見えないのに、何回もイかされてたら、あたし……なんかすげぇ怖くなってきて、でも気持ちよくて、わけわかんなくなって怖かった」
 まさかそんなことを考えていたなんて。
「いままでびびったことなんかねぇのに……」
 照れくさそうな声が僕の耳に滑り込んでくる。
 僕はなにも言わずに彼女から自分のものを引き抜いた。
「あ……」
 寂しそうな、鼻にかかった声を漏らすのが聞こえる。
 次いで、僕は薫の腰に手をかけると、有無を言わさずひっくり返した。
「ぉわっ!」
 びっくりした顔で僕を見上げる彼女の脚を掴むと大きく開く。そのままがむしゃらに腰を突き出して温かい彼女の中に戻った。
 その勢いのままキスをする。歯をぶつけるような不器用なキスだった。
「ぃっ、んむっ、ん……ぁ」
 感情のままに舌を突き出す。
 驚きのあまり固まっている彼女の舌に己のものを絡ませ、僕はなんとか自分の胸に湧き上がった感情を伝えようとする。
 どれだけ彼女の唇をむさぼっても足りないぐらいだ。
 しばらく口内を蹂躙していると、おずおずと薫のほうも僕の舌を求めてきた。
 求められる喜びで彼女の中に入っているものがさらに硬くなるのがわかる。
 そのせいか、薫が眉を寄せ、身をよじった。
 いつまでもくちづけているわけにはいかない。僕は名残惜しみながら唇をはなした。
 艶っぽく光る彼女の唇に、もういちどキスしたくなる。
「これならいいだろ」
 自分の衝動的な行動を誤魔化すように言う。きっと、いまの僕は間抜けな顔をしているに違いない。
「ぉう」
 頬を染めながら薫が応えた。涙に濡れたまつげが僕の目を惹きつける。
 伏し目がちの返事を聞くと、どちらが言うことをきかされているのか。これではむこうがご主人様みたいだ。
 僕は自分の立場を確認するべく、腰を動かしはじめた。
「そっ、な、きゅ、う、にっ!」
 腰を打ち付けるたびに、薫の息がつまる。
 ふたたび苦しそうに息をし始める薫を見下ろしていると、暴力的な気持ちになってくる。僕は彼女の肩に歯をたてた。
 切なげに目を閉じていた薫が顔をゆがめる。痛みと快感、どちらに反応しているのだろう。
 じわじわとあごに力をいれる。薫の身体からうめき声が伝わってきた。
「おっ、あ……っく、うぅ……! きりのぉ! ひぬっ、あらし、きりろに殺されるっ」
 切羽詰った言葉とは裏腹に、彼女のあそこはあくまで僕を優しく締め上げてくる。
 ぐちぐちと狭い中を押し広げ、かき回すと、あとからあとから愛液がかきだされて溢れた。
 薫の澄んだアーモンド形の瞳は大きく見開かれ、ぼろぼろ涙をこぼしている。快感に翻弄されすぎて、感情が抑えきれなくなったのだろう。
「ひぃ、ぉぁあ……ひぬぅ! あぉぉ、桐野、ひりのっ、イくぅ、ひくっ、死ぬっ、っひあ……!」
 顔を濡らし、歪めながら、薫が僕の名前を呼び続ける。
 必死で僕にしがみつく彼女の胸が小刻みに揺れているのが目に入った。舌を伸ばし、弾くようにして刺激してやるとさらに激しく鳴く。
 繋がった部分から、一つにとけていくような気がした。
「――薫」
 僕が呼びかけると、もう声も出せないらしい。彼女はゆっくりと僕の名前の形に唇を動かした。
 それを自分の唇でふさぐ。
 そろそろこちらの限界が近づいてきた。僕はいままで以上に強く腰を動かす。
 少しでも多く彼女を感じたい。全身で僕に応えてくれる彼女を。
「っ……!」
 僕はこらえきれずに呻きを吐き出した。
 同時に今までで一番深くへペニスを突き込む。
 僕の舌と絡まっていた彼女の舌が、口内で跳ね上がり、硬直した。
「っぎぃっ! んんんんんっ!」
 重なった唇の隙間から、彼女の絶叫がこぼれた。
 その瞬間、がくがくと痙攣した彼女の身体に連動するように、僕もイってしまった。
 自分でも驚くほどの量の精液が、びくびくと跳ねるペニスを通って彼女の中に吐き出される。
 とろりとした目で、口をぽっかりとあけて天井を見つめる薫。熱い粘液が奥に当たるたびに、小さくあえいだ。
 全部出し終えた僕は、深く息を吐きながら彼女の頬を撫でた。熱かった。
 それに反応したのか、薫は目を細めて僕を見つめた。僕と目が合うと、僕がいることに安心したように優しく微笑みかけてきた。
 いつもの彼女からは想像もできない笑みに、心臓を貫かれたようなショックを受けた。急に息苦しくなって思わず固まってしまう。
 そのことについては深く考えず、軽く触れるだけのキスをすると僕は彼女から離れた。
 最後まで、彼女のあそこは僕に吸い付くようにして、別れを惜しんでくれた。
「あ……っ!あ、うぁっ……」
 唐突に、慌てた声をだして薫が立ち上がろうとした。しかし、限界まで責められた彼女の身体はまるでいうことをきかない。腕を支えにしようとするも肘がくだけて役にたたない。
「どうかした?」
 僕が尋ねると、彼女は情けない声をあげた。
 力なく開かれた足の間から、しょろしょろと音をたてて彼女があせった原因が漏れだした。
 もちろん愛液ではない。あれはもっとねばねばしている。場所は近いが別のものである。
「おしっこだ……」
 呆然と僕は呟いた。
 顔を真っ赤にして声にならない声をあげ、こちらはきっちり音を立てておしっこを漏らす薫を呆然と視界に映す。
 混乱した頭で、床がフローリングでよかったなどと考える。
 きっともう身体に力がひとかけらも残っていないのだろう。セックスが終わって緊張感から開放されたせいかもしれない。我慢したくてもできないのだ。
 その証拠に、薫の表情は下半身に力を入れようと必死の表情だ。
「あっ、あ……あぁぁ――」
 彼女の声が消え入るのと同時に、おしっこも終わった。
 それまでも潤んでいた彼女の瞳に大粒の涙が浮かび、溢れた。
「うっ、っつ……! うぅうぅぅ……」
 しばらく耐えていたが、すぐにダムが決壊した。大きく声を張り上げて子供のように泣き出したのだ。
「えっ、うわっ! ちょ、どうしよう、あっ、薫?」
「ひっ、ぅ。もう、こんなとこっ……うっく、嫌われ……」
 くそっ! こちらまでうろたえてしまう。
「薫? 大丈夫。僕は嫌いになんかならないから」
「っう、ほんと?」
 怯えた上目遣いで僕の様子を窺う薫。
 それに心をくすぐられて、いじめたくなってしまうが、危ういところでこらえる。
「本当だから安心して。これぐらどうってことないから。前にも薫が変態でも好きだっていっただろ。僕はご主人様だ。これぐらいで大事な薫のことを嫌いになるわけないだろ。ここまでやった僕のせいってのもあるだろうし。だから泣かなくていいから、な?」
「わかった」
 そう返事をすると、安心したのだろう。かくんと頭を落とし、気を失ってしまった。
「喜多さん?」
 ためらいがちに名前を呼んでみたが、反応がない。
 思い返してみると、かなりキツいことをさせたからなあ。
 穏やかに眠る表情の彼女を見て、僕は自嘲の笑みを浮かべた。
 そして僕は振り返り、部屋を見渡すと、後片付けのことを考えて絶望的な気持ちに襲われた。


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