「イくっ……!」
 かすれた声が出たのと同時に、限界まで張っていたペニスから勢いよく射精する。
 痺れるような心地よさを感じながら、夢中で薫の中に精液を吐き出し続ける。そして、少しでも長く彼女を感じるために、出しながらも彼女の中をかき回す。
「熱いっ、ひぁっ、きりろのがれてるっ! あ……っあぁ! あ、またっ! 怖いよぉっ……助けてっ! 修、修、イっ、いくぅぅぅぅ!」
 薫も僕の発射と同時に頂点を迎えたらしい。絶叫に近い嬌声をあげて、全身を痙攣させながら、それでも僕のものを包み込み、快楽を与えてくれようとしている。
 どこにそんな力が残っていたのかと驚くほど激しく、僕を離すまいと足を絡め、腕でしがみついてくる。ペニスだけでなく、全身を包み込もうとでも言うのだろうか。
 最後にもう一度キスをしようとすると、目があった。なにかを言いたげに、口をかすかに動かすと、崩れるように気を失い、全身が脱力した。
 全身で僕に応えてくれる彼女に感謝しながら、唇に優しいキスをおとす。
 ぐったりとしている彼女の中から、自分のものを抜くとき、いつものように名残惜しい気持ちで一杯になる。
 汗でしっとりと濡れている薫の体が素晴らしく美しい。激しい運動のせいで乱れている金髪――根元のほうは少し黒い部分が見えている――も、今は閉じられている瞳の光も、憎まれ口しか叩かない口も、荒く息をついて上下している胸も、その下の滑らかなお腹も、多少濃い目のあそこの毛まで。もちろん、すらりとした足も大好物だ。
 手近にあったティッシュペーパーで薫の股間を拭いてやりながら、彼女は僕がどれだけ自分を好きかわかっていないだろうなと思うと、なんだかおかしくなった。
 内ももに指が当たると、びくりと足がふるえるのが面白い。
 不覚にも頬を緩めながら、一通りの後始末をしてしまうと、僕は困ってしまった。
 シャワーを使おうにも、どこにあるのかわからないし、全裸のまま家中をさまよって、無事に風呂場を見つけられたとしても、僕がシャワーを浴びている最中に誰かが帰ってきたら、どうなることか。特にそれが正造さんだったらどうなることか。迷わず行けよ、行けばわかるさ、とは言いたくない。
 ぐっすりと眠る喜多の髪の毛を撫でながら考えること数分。
 僕の出した結論はシャワーをあきらめるだった。
 情けない。
 笑わば笑え。あの恐怖は味わったものにしかわからないのだ。
 喜多はというと、人の苦しみも知らずに、幸せそうな顔をして眠っている。
 腹立たしい。
 ……ほっぺたでもつねってやるか。
 僕が頬をつまんでやると、痛いだろうにもかかわらず、彼女はにへらとだらしない笑みをこぼした。
「ん……んむ、桐野ぉ」
 そんな嬉しそうな声で呼ばれては、これ以上どうすることもできない。
 じっと彼女の寝顔を見ていると、なんだか、とても――
「可愛いな」
 思わず声に出してしまってから、僕は慌てて口を手で押さえた。
 危ない……以前のようなミスを犯してしまうところだった。聖闘士に同じ技は二度通じない、いまやこれは常識なのに! この桐野修に二度同じ手を使うことはすでに凡策のはずなのに! 本当に危ないところだった。
 恐る恐る彼女の様子を窺うと、幸いにもいまだ気づいた様子がない。
 胸を撫で下ろしながら、身支度を整える。
 こういうときの楽さは男で良かったと思う。
 さて、次なる問題は喜多だ。このまま気がつくまで放っておきたいが、いつまでも全裸のままというわけにもいかない。
 彼女を起こすべく体をゆすってやると、すぐに目を開けた。しかしまだ寝ぼけ眼である。
「あ……桐野だ。んー」
 まだ夢の世界にいるのだろう。喜多が目を閉じてキスを求めてきた。彼女の夢の中の僕ならキスをするのだろうが、現実の僕はさすがにそこまではじけられない。
 変わりに、両頬をつねってやる。
「んひっ」
「桐野だ、じゃない。シャワーかなにか浴びてきたほうがいいと思うんだけど」
「え? あっ、また気失って――」
「感じやすいのもいいことばっかじゃあないな。毎回だと大変だ」
「きっ、桐野が激しいからだろっ! あたしは止めろっつってんのにいつもいつもっ!」
「そうか、僕のせいか……」
 顔を伏せて落ち込んだ振りをすると、一発で引っかかり、とたんに喜多が慌てる。
「え、桐野?」
「そうだよな。いつも僕が無理やりしてるんだ、嫌がってるのに。これからはそんなことしないようにする」
「いや、そんなに嫌っつーわけでもねぇけど、その――」
「いいんだ。自分勝手なことばかりして悪かった。これからは喜多さんをあまり責めないようにする」
「あ……おい、桐野。嫌じゃねぇから、その、な?」
「なにが?」
「だから、桐野に色々されるのが」
「はっきり言ってもらわないとわからない」
「その、桐野に……胸とか、あ……そことか、触られるのがだよっ!」
 ここまで言って、喜多はようやく僕がにやついているのに気づいた。
「あっ! てめっ!」
 喜多が僕に飛び掛ってくる。といっても、まだ体が言うことを利かないのだろう。こちらにのしかかってくるのが精一杯のようだ。
 薄いとはいえ、ぷにぷにと柔らかい胸が当たったりして困る。困らないか。
「ちょっと、喜多さん、服、服ぐらい着てからにしたら? それかシャワー浴びてこないと」
「ぅわっ! はだっ、裸っ」
 今更自分の姿に気づいた喜多が素早く胸を隠し、内股になって壁に張り付く。
「別に隠さなくてもいいだろ」
「うっせぇ! 見るなっ、向こう見てろ」
「もう十分見てるのに」
「そういう問題じゃねぇっ!」
「はいはい」
 ここは素直に言うことをきいておこう。
 仕方ないので、窓に目を向ける。いつの間にこんなに時間が経ったのか、空の色はもう夕方近い。


進む
戻る

作品選択へ戻る